【88】学生たちの調査実習

九月下旬、学生たちを道北の中頓別町に連れていき、調査実習を実施した。毎年恒例の学生調査実習だが、昨年はコロナ禍で実施できず、今年も七月実施予定だったのを二回延期して、ようやく実施することができた。

 

調査実習って何をするの? 私のゼミの場合は、ほとんどがインタビュー。中頓別町では、三日間で十二組十八名の方にインタビューした。町役場職員、鹿肉加工業者、酪農家、コミュニティ銭湯経営者、まちづくり協議会メンバー、森林組合組合長、認定こども園園長、「自然学校」職員、元地域おこし協力隊の菓子店経営者など、多彩な人びとが相手だった。

 

十一名の学生たちは学期を通して、中頓別町の歴史や現状を勉強し、割り振られたインタビュー相手にかかわる資料調査を十分に行い(たとえば酪農家へのインタビューをする学生は、北海道の酪農がかかえている課題について資料を集めて学習するなど)、聞くべきことを整理した上で、中頓別に向かった。

 

中頓別ではいくつかのグループに分かれて、グループでインタビューしたので、どの学生も合計五つ程度のインタビューに参加することになった。三日間ずっとインタビューばかり続いた。学生のうち一人(中国からの留学生)が現地参加できなかったので、北京からネットでのインタビュー参加となったが、これもまあなんとかうまくいった。

 

どのインタビューも刺激的で、当然だけれど学生たちが用意した質問を超えて、さまざまな話になった。そして三日目の最後には、中頓別のまちづくりをリードしてきた小林生吉町長と学生たちが懇談をもった。

 

二十六年前に北海道大学に赴任して以来、学生たちと一緒に現地調査する、というのを、自分の仕事と思い、続けてきた。いろんなところに学生を連れていったなあ。というより、私自身がそこで実に多くを学んだ。

 

どこへ連れていって誰の話を聞くかを決めるのがいちばんの関門なのだが、これまで、いろいろな縁があってそれを決めることができた。その結果、ニセコ町、美唄市、日高町、南幌町、鶴居村、札幌市小別沢地区、しゃこたん(古平町・積丹町)、そして中頓別町、と続いた。途中、正規の授業ではないが、東日本大震災のあと、宮城県石巻市での調査に、希望する学生たちを連れていった。合宿生活になって、あれがいちばんおもしろかったかも。

 

「聞く」という作業からボトムアップでものを考える。そのことを身につけてほしくて、ずっとこうした調査実習を続けている。しかし、大学の授業という限られた枠の中で、そういうことが本当に身につくのかどうか、本当のところはよくわからない。手応えは、あるときもあれば、ないときもある、としか言いようがない。

 

でも、教員生活の最後まで続けるよ。

 

(さっぽろ自由学校「遊」 ゆうひろば2021年10月号掲載)